『技能実習生の失踪』が5年前から比べると2倍近くになっているっていうけど・・・。『失踪の本当の原因は?』
※法務省 出入国在留管理庁『外国人技能実習制度について』より引用
◎技能実習生の失踪が2倍に!?
2019年11月12日のニュースで、出入国管理庁が、『外国人技能実習生の失踪防止』へ新対策を講じるという報道がされていました。
技能実習の歴史は古く、長く受入れをしているという企業も多いです。
今年は『特定技能』在留資格が新しくスタートしたこともあり、改めて外国人労働者についての報道をよく目にするようになりました。
毎年増え続ける外国人技能実習生の失踪を防止する為に、新たな対策を出入国在留管理庁がまとめました。
出入国在留管理庁によると、外国人技能実習生の失踪は年々増えていて、2018年1年間では9,052人と、5年前の4,847人から2倍近くになっているという事です。
新たな対策として、
『大量に失踪者を出した実習先や監理団体は、適正な実習ができていないと見なして、新規の受け入れを停止する』
『賃金の不払いがあるなど違法性が確認できれば、受け入れをできなくする』
『失踪した実習生を雇用した企業名の公表なども検討する』
等があげられています。
森法務大臣も、閣議後の記者会見で、『施策を着実に実行し、技能実習生の失踪者数の減少に全力で取り組みたい』と述べられています。
◎技能実習制度の仕組み
今更ながらになりますが、外国人技能実習生は、主に次の3機関によって成り立ちます。
・外国の『送出し機関』
・受入れる『管理団体』
・実習先の『受入企業』
『技能実習生』を受け入れようとする企業は、『管理団体』(事業協同組合や商工会等の非営利の団体で、機構による調査を経て、主務大臣の許可を受けた団体)を介して、指導・支援を受け、外国の『送り出し機関』から技能実習生を受け入れます。
『送出し機関』は、実習生の候補を選抜し、選考を経て採用が決まった実習生に、日本語や日本の文化を教育します。また、技能実習制度や、日本の在留資格などの法律的な説明も行います。『送出し機関』は『技能実習生』からこれらに係る手数料を徴収します。
※参考までにベトナムの手数料上限について(在ベトナム日本国大使館HPより)
『管理団体』と『受入企業』は、実習計画等を作成し、地方出入国在留管理局へ申請を行い、入国許可が下り、入国することができます。
入国後はすぐに実習が始まるわけではなく入国後1か月講習を受けて、初めて雇用関係がスタートします。
ニュアンスの違いは多少あると思いますが、『団体管理型』と呼ばれる技能実習生はおおむねこのような流れで来日します。
◎失踪の原因はどこにあるのか?
では、技能実習生が失踪する原因はどこにあるのでしょうか?
『送出し機関』
送出し機関は、技能実習生が日本に入国するまでが主な責任を負いますが、日本へ行ってしまったら終わりではなく、その後も管理団体との契約は続き、管理費も徴収しているので管理責任は発生しています。
現在、急激に増加した技能実習生を送り出す『送出し機関』は、ベトナムだけでも300を超えています。そして、過去に技能実習生が実習を終えて、母国に帰ってから就く仕事の多くがこの『送出し機関』での先生などです。
『送出し機関』でも急激に技能実習生が増えています。これは、確実に先生の能力低下や、管理力の低下を招いています。事前の説明が不足していたり、実習生の日本語水準が年々低下していたりする要因になっているのです。
一方でいまだに、管理団体との接待費を実習生から徴収する手数料に上乗せしたり、高額な借金をさせたりする『送出し機関』もあるという報道を見ることもよくあります。
『送出し機関』の選定では、『技能実習生から徴収する手数料』を確認しておくことをおススメします。
『管理団体』
技能実習生との雇用関係は『受入企業』にありますが、技能実習生の受入に関する管理責任は、この『管理団体』にもあります。技能実習は、実習計画に基づいて実習先である『受入企業』にて行われますが、『監理団体』による訪問指導・監査が義務付けされています。
ですから、『管理団体』は、技能実習が適切に行われているかを定期的に確認する必要があり、『技能実習生』が実習を行い、日本で生活していく為に必要な支援を常に行っていく必要があります。
これらの管理が適切になされず、多くの失踪を出したり、不正行為を行ったりした『管理団体』には、今後ますます厳しい処置が取られていく事になります。
『受入企業』
『受入企業』には何と言っても雇用関係が存在し、日本人を雇用するのと同じように雇用責任が存在します。
失踪の主な原因としては、『給料の未払い』や『人権損害』、『実習計画との齟齬(そご。食い違いの事)』などが主にあげられます。
約束していた給料が支払われなかったり、暴力を受けたり、パスポートを取り上げられたり、実習計画と異なる仕事に従事させられたりという不正行為がそれにあたります。
本来会社は、従業員を守る必要があります。ただでさえ知らない国に来て、知らない言葉の中で働く『技能実習生』は弱者です。少しでも良い環境を提供し、日本での生活を支援する必要があると私は考えます。日本人が会社を辞めることと同じことではないかと思います。
それぞれに様々な事情があるため、私はどこが悪いという批判をしたいわけではありませんが、3つの機関で成り立っている以上は、全てに責任があると考えるのが一般的です。
◎失踪するってよほどだと思うんです。
先に挙げませんでしたが、もう一つの原因としてよく言われるのが、ブローカーという存在があるそうです。私は、そのような方にお会いしたこともないのであくまでイメージですが、
『技能実習生』等を対象に、より好条件で働けるような環境を勧めて、失踪を手助けする人たちなのでしょうか?
いずれにしても、実習生は失踪すればどういう事になるかを知っています。もちろん不法滞在、不法就労という事で強制送還されますし、母国に帰っても今後生きていく上で、かなりの弊害が伴う事は事実であり、知っています。
それでもなお、失踪を選ぶって、よほどだと思うんです。
誰か手を差し伸べる人はいなかったのでしょうか。そこまでなる前に相談できる人はいなかったのでしょうか。普段から悩みを聞いてくれる人、味方はいなかったのでしょうか。
彼らの困りごとの多くは、日本語がわからない、信頼できる日本人がいない。相談できる相手がいないという事なのだと思います。だから行政が相談できる場所を増やし始めています。
私がスマイルベアーの『日本語教室&コミュニティー』を始めたのは、これらの背景があります。
ただ日本語を学ぶ場所だけではなく、会社以外でやさしい日本語を使う、やさしい日本人の知り合いを増やし、気軽に悩みを話せる場所、困りごとを解決できる場所ができれば良いなと思って始めました。
◎技能実習生の失踪の実態
『技能実習生の失踪』が5年前から比べると2倍近くになっているそうです。
技能実習生の人数は、
5年前の2014年、167,626人だったのが、
昨年の2018年、328,360人と2倍近くになりました。
一方の失踪者の数は、
5年前の2014年、4,847人から、
昨年の2018年、9,052人の2倍近くとなりました。
失踪者数が2倍になった背景には、技能実習生の総数自体が2倍になっています。
2014年に2.89%だった割合は、2018年に2.75%と微妙にですが減少しています。
2017年の11月1日に、『外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律』が改正され、制度が厳格化されました。
一方、厳格化されただけではなく、優良な『管理団体』や『受入企業』には、緩和もされています。制度の目的を理解し、適正な実施を行っている機関にとっては、活用しやすい制度に変化してきているのです。
これまで『受入企業』は、知識や経験も少なく、管理団体の言われるまま、それが当たり前として受け入れを進めてきた背景も少なからずあります。
昨今は、『受入企業』や、『管理団体』にも多くの企業が増加し、メディアに取り上げられることで不正が明るみになり、これまでの旧態依然としたやり方では行かなくなってきました。また、今までの管理団体に不満があり、どこかのタイミングで新しい『管理団体』に変えたいという企業も増えてきたと聞いています。
◎『受入企業』にとって大切なこと
『受入企業』にとっては、増加している『管理団体』『送出し機関』の選定こそが大事だと考えます。
これは、これから増加する『特定技能』の受入れをする際に委託する『登録支援機関』にも同じことが言えます。
『人材派遣会社』や『職業紹介会社』『求人サイト』などの媒体も多すぎます。
どこを使えばいいのかわからない。選ぶ基準がわからない。という状況です。
だからこそ、それを専門家がサポートする必要があり、
『受入企業』にとって『どこを』使えば最善なのかを、専門的にアドバイスできる中立的立場が必要だと考えています。
それが『スマイルベアーが目指していること』という事になります。
『あなたのお困りごとを解決して、共に笑いあえるパートナーになりたい』
オフィス スマイルベアー 山口 真二